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 教授挨拶
 杏林大学医学部小児科学教室は、1970年(昭和45年)付属病院開院時に初代主任教授の高津忠夫先生により開設され、2020年(令和 2 年)に50 年目を迎えました。この間、広大な東京多摩地区で唯一の大学病院本院小児科として、診療、教育、そして研究を担ってきました。教室の同窓会員は当大学病院やその関連病院はもとより、北海道から九州までの多くの中核病院の小児科勤務医として、あるいは地域医療に根ざした開業医として日本の小児医療を支えてきました。
 一方で我が国では近年の少子化、小児人口の減少により、小児医療は大きな転換期を迎えています。1970年には15歳未満のこどもは2482万人、全人口の23.9%でしたが、2021年には1493万人、11.9%と推計され、過去最低となりました。さらに昨年来の新型コロナウィルス感染症の流行により、医療を取り巻く環境が大きく変化しています。従来型の「病院に来る患者だけをみる小児科医」では少子化時代のニーズに応えられません。
 我々の教室ではこれまで経験したことのない新たな状況にも柔軟に対応して活躍できる小児科医の育成を目指しています。具体的な特色について説明します。

最新の専門医療を提供できる小児総合診療医をめざす

 小児科学はこどもに関するすべての疾患を扱う総合臨床医学といわれています。我々の教室ではこれまでも伝統的に、小児総合診療医のエキスパートの育成を重視してきました。それと同時に大学病院として最新の知見に基づいた質の高い医療を提供する責任を果たしています。1次から3次までの救急医療への対応、地域の医療機関からの紹介患者の受け入れ、総合周産期母子医療センターの新生児・未熟児集中治療管理室での診療を通して、地域医療および高度専門診療に貢献しています。総合的な一般医療と専門的な医療を同時に経験できるのが我々の教室の特徴です。また若手医師の指導に熱心な先輩が多く、相互への信頼に基づき切磋琢磨する雰囲気があります。

 

こどもと家族の幸せをチーム医療で支援

 医療は疾患の治療だけで完結するものではありません。患者や家族みんなの情緒・心理面、社会面への配慮も必要です。当院では多職種の医療スタッフやソーシャルワーカーなどと連携する体制が構築されており、心理的・社会的対応が必要な場合にも迅速に適切な対応が可能です。チーム医療の実践を身近で体験するのは貴重な経験になります。

 また小児科医はもともと健診や予防接種など発症予防、健康教育などに従事する機会が多くありました。今後は病気の有無にかかわらず、保健・保育関係者、教育者など、こどもをとりまく関係者と協力して成長過程にあるこどもたちの心身の健やかな成育を推進することが、小児科医に求められる重要な役割のひとつになるでしょう。

 

臨床現場でのリサーチマインドに基づく研究

 現在広く行われている治療や病態認識があるとしても、それが正しいとは限りません。新たな知見の出現により従来の常識が覆されることも珍しくはありません。臨床医が診療における疑問や探究心に真摯に向き合い、問題解決のために適切な方法で研究を遂行することにより、病因究明や病態解明、さらには新たな治療戦略の開発へと繋げることもできます。当教室の研究室では長年培った実績をもとに基礎実験レベルの研究も行っています。さらに臨床検体の解析を行う研究や、患者集団を対象とした臨床研究の実施など、目的にあわせた研究を指導する体制を整えています。

 

医療者自身のやりがい、幸せを大切にする

 医療を実践する我々が、家族、身近な人々を含めて身体的、精神的、社会的に安定・充実していることは、良質の医療を提供するための基本です。例えば妊娠・出産を経験する女性医師の中にはキャリアとの両立を不安に思う方もいるかもしれませんが、その必要はありません。当教室には出産後の短時間常勤枠制度を利用して、限られた時間でも他の常勤医と変わらない業務をこなしている女性医師が多くいます。小児科学教室は、こどものよき理解者である医師の集まりです。こどもの発熱などで急に予定が変更されても寛容です。もちろん女性医師に限らず男性医師も家事や育児は担うべきであり、それ以外にも自身の健康や家族の介護など様々な事情があります。教室員がお互いを尊重し、快く支援する人間関係が築かれていることが大切です。

未来をになうこどもたちの笑顔を、一緒に守る小児科医になりませんか。

 

2021年 5 月吉日

杏林大学医学部小児科学教室 教授

成田雅美

 



 この度、臨床教授を拝命いたしました。小児を疾患という側面だけでなく、全人的な視点で子どもの健康を守り、成長を支えるような診療を心がけます。私の専門分野である小児血液腫瘍疾患は、希少疾患ではありますが生命を脅かす重大なものが多く、治癒を目指すには包括的治療が必要です。そのため、関連科の先生方の御協力をいただき大学病院の総力を挙げ、さらに近隣の施設とも連携し、最善の治療を尽くしたいと思います。また、大学の機能として重要な学生教育や若手医師の育成、そして難治白血病克服のための研究にも力を注ぎたいと思います。

 どうか御指導、御鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。

 

2022年5月吉日

杏林大学医学部小児科学教室臨床教授

吉野浩

 



 当教室の沿

  1970年 昭和45年 高津忠夫 教授(初代主任教授)
  1972年 昭和47年 大島正浩 教授(循環器小児科)
  1976年 昭和51年 市橋治雄 教授(教室主任、感染症学)
  1979年 昭和54年 渡邉言夫 教授(膠原病学)
  1990年 平成  2年 阿波彰一 教授(循環器病学)
  1990年 平成  2年 渡邉言夫 教授(教室主任)
  1994年 平成  6年 松田博雄 教授(保健学部兼担、新生児病学、神経病学)
  1996年 平成  8年 阿波彰一 教授(教室主任)
  1997年 平成  9年 総合周産期母子医療センター開設
  1998年 平成10年 河野寿夫 教授(新生児病学)
  2000年 平成12年 河野寿夫 教授(教室主任)
  2000年 平成12年 別所文雄 教授(血液腫瘍学)
  2002年 平成14年 別所文雄 教授(教室主任)
  2003年 平成15年 赤木美智男 教授(医学教育学兼担、循環器病学)
  2008年 平成20年 楊國昌 教授(腎臓病学)
  2009年 平成21年 岡明 教授(教室主任、神経病学)
  2013年 平成25年 楊國昌 教授(教室主任)
  2021年 令和3年 成田雅美 教授(教室主任、アレルギー学)
  2022年 令和4年 吉野浩 教授(血液腫瘍学)