我々の教室は、初代主任教授の高津忠夫先生による開設以降、平成29年で48年目を迎えました。この間、広大な東京多摩地区で唯一の大学病院本院小児科として、診療、教育、そして研究の推進を行ってきました。
教室の同窓会員数は200名を超え、当大学病院やその関連病院はもとより、北海道から九州までの多くの中核病院の小児科勤務医として、あるいは地域医療に根ざした開業医として日本の小児医療を支えています。
最近、成人領域では、専門医としての総合臨床医を育成するという試みが始まっています。大学病院というと、敷居が高い、専門医療のみを受け入れる、などという誤解の声が、患者さんはもとより、紹介を頂く開業医の先生方からも未だ聞かれます。しかし、改めて言うまでもなく、小児科学は今も昔も総合臨床医学であり、どこの大学病院や基幹病院の小児科医も、開業医と同様に総合臨床医として働いています。一方、大学病院での診療内容について、私自身が危惧していることが一つあります。それは、最近のMRIなどの画像検査や臨床検査の著しい進歩による負の側面です。患者さんの膨大なデータを、コンピューター端末から簡単に迅速に得ることができるようになり、これはこれで早い治療に繋がるわけですから、大変な貢献だと思います。しかし、これらのデータを受動的に得ることで大凡の診断ができるようになり、その分、目の前の病気の子供を能動的にしっかり診察するという基本的な姿勢が崩れつつあります。これでは、MRIや迅速の血液検査ができない施設では、何もできない医師になってしまいます。
我々の教室の臨床の伝統は、徹底して理学所見を取ることのできる総合小児科医エキスパートの育成にあります。診療部門は、一般診療部門と、総合周産期母子医療センター内の新生児集中治療室(NICU)および後方病室(GCU)部門に分かれています。医局員の半数近くがNICU/GCUに勤務していますが、その中には、一般部門の医師からの定期的なローテーションを含んでいます。これは、我々の教室員同士の人間関係が円滑で、お互いに十分なコミュニケーションを取ることのできる環境にあるからこそできることです。このような診療体制で、更にそれぞれの専門性で補い合いながら、我々は500gの赤ちゃんが50kgの思春期に成長するまでフォローできる体制を維持しています。
我々の教室のもう一つの特徴は、研究スタイルにあります。子どもの難治性の病気の原因や病態の解明と新しい治療戦略、そして創薬を目標に、基礎の教室に劣らない手法と設備による徹底した大学院教育を行っています。殆どの臓器機能の維持や障害に関連する新しい分子群について、大学院生やスタッフが日夜研究活動をしています。ですから、特定の領域に偏った内容ではありません。研究を強く奨励する意味は、研究の過程は、四角い頭を丸くする、2次元的(平面的)な考え方を3次元いや4次元的な考え方にアップデートできる絶好の機会だからです。この柔軟性のある物の考え方が、診療能力の飛躍的な向上に繋がることは、これまでの多くの経験からも確信しています。
こんな柔軟性に富んだ、そして将来性のある我々の医局に来ませんか! お待ちしています。
平成29年5月吉日